相 続

亡くなった方(被相続人)のすべての財産(一切の権利や義務)を、一定の親族(相続人)が引き継ぐことを相続といいます。

相続の登記 

相続手続きは、遺言書があればその内容に従い、遺言書がない場合は相続人の間で遺産分割協議を行います。
遺産分割協議を行い、相続人全員が遺産相続の内容について合意した場合は、遺産分割協議書を作成します。

遺言や遺産分割により取得した財産が土地や建物の場合は、相続による登記手続が必要になります。

遺産分割による相続登記

遺産分割協議による相続登記に必要な主な書類は以下のとおりです。

  • 被相続人の、生まれてからから亡くなるまでのすべての戸籍謄本、除籍謄本
  • 被相続人の戸籍の附票(または本籍地記載の住民票)
  • 相続人全員の戸籍謄本(または抄本)、印鑑証明書
  • 相続される方(新しく名義人となる方)の住民票
  • 相続手続をされる不動産の固定資産評価証明書(または納税通知書)
  • 遺産分割協議書(署名、実印)
  • 委任状

上記の書面のほか、被相続人の最後の住所と登記簿に記載されている住所が一致しない場合があります。その場合には、戸籍の(除)附票等を添付して、住所をつなげる必要があります。

しかし、保存期間の定めなどで戸籍の附票が廃棄されている場合もあり、きちんと住所がつながらないこともあります。
その際は、権利書の写しなどで、所有者であることを証明する必要があります。

相続登記(不動産の名義変更)は相続税の申告と違い、いつまでにしなければならないという期限はありません。
しかし、不動産を売却したり、金融機関からその不動産を担保に融資を受ける場合や、住宅ローンの返済が終わり抵当権の抹消登記をするには、その前提として、相続登記手続きが必要になります。

相続登記をせずにそのまま放置しておくと・・・
  • 不動産の名義が何十年も前にに亡くなられた方、たとえば祖父や曾祖父のままだったりすることがあります。
    このような場合は、時が経つにつれて新たな相続が発生し、相続関係が複雑になり、結果、話し合いがまとまりにくくなることが多くなります。
  • 相続登記を何年も放っていて、いざ手続きをするとなった時に、戸籍を調査するまでは誰が相続人かわからない、どこに居るのかわからない、ということもあり、戸籍・住民票等の収集に時間や費用がかかってしまいます。
    また、戸籍や住民票が保存期間の関係で取得できない場合は、不在住・不在籍証明等、必要書類が増えてしまいます。
  • 面識のない親族と遺産分割協議をしなければならない可能性が高くなります。
    未成年者や認知症の高齢者、行方不明の方等がいる場合は、協議が進められなくなります。
    別途、後見の手続きや特別代理人の選任等が必要となる可能性もあります。

このような事態が生じてしまうおそれがありますので、できる限り早めに相続登記することをお勧めいたします。

相続放棄の手続き

相続放棄は、被相続人が亡くなったあとに、相続する権利がある人が、自分が相続人になったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てをしなければなりません。

その期間を過ぎると、相続放棄を行うことができなくなります。

手続きの主な流れ

  1. 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、戸籍等を添付して、「相続放棄申述書」を提出します。
    印紙:800円 切手:合計514円(内訳84円×6枚、10円×1枚)(福岡家庭裁判所の場合)
  2. 提出後1~2週間程すると、家庭裁判所から、審理のため、自らの意思にもとづく申述かどうか等をお尋ねする照会書が届きます。
    照会書をよく読んで、回答書に記入し、署名押印して裁判所に持参又は送付します。
    (この時押印する印鑑は、1.で提出した際に使用したものと同一のものが必要です。)
  3. 家庭裁判所の審理の結果、相続放棄が認められた場合には、家庭裁判所から「相続放棄申述受理証明書」が送られてきます。

⇒ 相続放棄が受理されると、初めから相続人ではなかったものとみなされます。

■相続放棄はどんな時に利用するのでしょうか?

  • 借金など、明らかにマイナスの財産が多い場合。
    相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も、一切相続しないことになります。
  • 亡くなった方や、他の相続人と疎遠であったり、相続人として相続手続きに関わりたくない場合。
    ただ単に財産がいらないという相続人でも、負債がない限りは、特に相続放棄の手続きの必要はありません。

法定相続人と法定相続分について

法定相続人について

民法では、相続人になれる人の範囲や順位が定められています。
相続権がある人を法定相続人といいます。法定相続人は次のとおりです。

  1. 配偶者・・・配偶者は常に相続人となります。
  2. 次に掲げる人は次の順位に従って、配偶者とともに相続人となります。 
    第1順位  子    
    第2順位  直系尊属      
    第3順位  兄弟姉妹  
  • もし、自分の相続人となる子または兄弟姉妹が、自分より先に死亡していた場合は?
    →子の子(孫)、兄弟姉妹の子(おい、めい)が、代わって相続します。これを「代襲相続」といいます。
    子が相続人となる場合の代襲相続は、孫、ひ孫と、何代も続きますが、兄弟姉妹が相続人となる場合は、代襲相続は一代限りとなります。つまり、おい・めいまでとなります。
  • もし、第1順位、第2順位、第3順位の相続人がおらず、遺言書もない場合は?
    特別縁故者が家庭裁判所に申立ての上で認められた財産を除いては、すべて国庫に帰属することになります。

法定相続分について

法定相続分は次のとおりです。

  1. 配偶者及び子が相続人であるとき
    → 配偶者の相続分 1/2 子の相続分 1/2
  2. 配偶者及び直系尊属が相続人であるとき
    → 配偶者の相続分 2/3 直系尊属の相続分1/3
  3. 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるとき
    → 配偶者の相続分 3/4 兄弟姉妹の相続分 1/4
  4. 子、直系尊属又は兄弟姉妹がそれぞれ2人以上のときは、
    相続分は、それぞれ人数で割った数となり、各人の相続分は均等になります。

(例)配偶者、子供3人の場合・・・   
  配偶者の相続分は1/2 
  子供の相続分は、1/2×1/3=一人あたり1/6

遺言書作成

1.遺言書の種類

遺言書の種類としては、おおまかに、公証役場で公証人が書く公正証書遺言と、自分で自筆で書く自筆証書遺言の2種類があります。  

  • 公正証書遺言・・・
    公証役場の公証人が作成する遺言書です。
    2人以上の証人立ち会いのもと、遺言する本人が口述した遺言内容を公証人が筆記し、各自が署名押印する方法により作成されます。

    原本は公証役場に保管されるため、遺言書の存在・内容が明確で、滅失や偽造・変造のおそれもなく、遺言者が亡くなった後の家庭裁判所での検認手続等は必要ありません。 

    ただし、公正証書遺言は作成の際には、 財産の価格に応じて公証人手数料の費用がかかります。
    遺言者本人が病気などで外出することが難しいときは、公証人が本人のご自宅や病院などへ出張して作成することもできます。
  • 自筆証書遺言・・・
    遺言書の全文、日付、氏名をすべて自書(ただし、「財産目録」については例外あり。)し、これに押印することによって成立する遺言書です。

    遺言者が自分で作成することができ、特別な費用もかかりません。

    しかし、保管の方法によっては、遺言書を紛失する可能性や周囲の人による隠匿などのおそれがあります。
    また、自筆証書遺言は、遺言者が亡くなったあとに遺言書の内容を実現するためには、遺言書を家庭裁判所提出して、検認の手続きを経る必要があります。

    ただし、令和2年7月10日から始まった自筆証書遺言書保管制度を利用して、法務局において保管された遺言書については、家庭裁判所の検認手続きは必要ありません(下記4.「自筆証書遺言書保管制度」)。

    自筆証書遺言による相続登記手続の際には、公正証書遺言と比べて必要となる戸籍が多く、また遺言書が法務局に保管されていない場合には、家庭裁判所の検認手続きにも手間と費用がかかることになります。

2.遺言書の内容

遺言書の内容としては、法律的な効果が生じる遺言事項と、法律的な拘束力がない付言事項とに区別されます。   
これは、公正証書遺言であるか自筆証書遺言であるかを問いません。  

  • 遺言事項(いごんじこう)・・・
    遺言事項というのは、遺言書に書くことで、法的効果が生じます。民法やその他の法律に定めがあります。
    例えば、相続分の指定や遺産分割方法の指定などの財産に関するもの、遺言執行者の指定や遺言認知などの身分に関するものなどがあります。  
  • 付言事項(ふげんじこう)・・・
    付言事項には、法律に定めはなく、法的な拘束力はありません。    
    例えば、子供や家族、財産を受け取ってほしい人への思いなどを自由に書くことができます。

3.自筆の遺言書の作成

自筆の遺言書をつくるときに、法律の要件となる大切なポイントが4つあります。

  1. 自筆で書く
    遺言書は、タイプライターやワープロなどは使うことはできません。代筆もできません。
    全文すべて、自分で、手書き(自書)しなければなりません。

    しかし、財産目録については、例外で、全部または一部の目録を添付するときは、自書しなくてもよくなりました(平成31年1月13日施行)。

    例えば・・・
    ① 財産目録をパソコン等で作成することができます。
    ② 遺言者以外の人が財産目録のみ作成することもできます。
    ③ 不動産について登記事項証明書を財産目録として添付することができます。
    ④ 預貯金について通帳の写しを財産目録として添付することもできます。

    ※注意 自書によらない財産目録を添付する場合には、その「毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)」に署名押印をしなければいけません。
  2. 日付を正確に書く 
    和暦、西暦、どちらでも構いませんが、 遺言書を作成した日付を「●年●月●日」ときちんと特定して書きます。
    「吉日」という書き方はできません。
  3. 署名する
    戸籍上の名前を姓・名を正確に書きましょう。
  4. 押印する 
    認印でもかまいませんが、実印の方が、遺言者が使っていた印鑑であると確認しやすいこともありますので、実印をおすすめします。
* 遺言書の作成時の注意点
  • 二人以上の人が同じ書面に一緒に書くことはできません。
  • 遺言書は何度でも書きなおすことができます。   
  • 遺言書に書いた財産でも、その後使ってしまっても大丈夫です。 
    たとえば、遺言書に財産として預金の口座を書いた場合は、もう預けたお金を動かしてはいけないのではないか、お金を使えなくなるのではないかと心配される方がいらっしゃいますが、もちろん使ってしまって大丈夫です。

    同様に、遺言書に財産として不動産を書いた場合も、自ら処分してしまうことについて、何の問題ありません。  
    遺言書に書いた財産を処分したり、預金を使ったりしたときは、その行為によって、前の遺言を取り消したものとみなされます。

4.自筆証書遺言書保管制度

遺言書保管の申請手続きの流れ

  1. まずは、自筆証書遺言に係る遺言書を作成します。(上記3.「自筆の遺言書の作成」)
  2. 遺言書保管の申請をする遺言書保管所(法務局)を決めます。
    保管の申請ができるのは、
    ① 遺言者の住所地 
    ② 遺言者の本籍地 
    ③ 遺言者が所有する不動産の所在地

    のいずれかを管轄する遺言書保管所(法務局)になります。
  3. 申請書を作成します。
  4. 保管の申請の予約をします。
    ※ 必ず予約が必要です。当日予約はできません。
  5. 保管の申請をします。
  6. 保管証を受け取ります。

遺言書保管の申請に必要なもの

  • 自筆証書遺言に係る遺言書(封筒は不要です。)
  • 申請書(法務局にも備え付けられています。)
  • 添付書類
    本籍の記載のある住民票の写し等(作成後3か月以内)
  • 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証等の顔写真付きの身分証明書)
  • 手数料(収入印紙、1通につき3,900円)

注意事項

  • 法務局において保管されている自筆証書遺言書については、家庭裁判所での検認が不要となります。
  • 手続きには、本人が出頭する義務が課されていますので、必ず遺言者本人が法務局に行く必要があります。
  • 法務局では、自筆証書遺言の方式について、外形的な確認を行います。
    遺言書の内容についての相談をすることはできません。
  • 作成された遺言書が所定の様式に合うものであれば、保管制度が開始する前に作成した遺言書でも保管申請することができます。
  • 法務局に遺言書を預けたあとでも、遺言書の内容を閲覧することや、保管の申請を撤回することは可能です。
    ただし、閲覧を請求できるのは、遺言者ご本人のみとなります。
  • 保管を申請して以降に、住所・氏名等に変更が生じた場合は、その旨を届け出る必要があります。

5.遺言書検認の手続き

遺言書の検認とは、亡くなられた方が自分で手書きで作成した自筆の遺言書について、法務局において保管される遺言書保管制度を利用していない場合に必要となります。

相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など、検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するために家庭裁判所に申立てを行う手続です。

なお、この手続は遺言の有効・無効を判断するものではありません。
遺言自筆証書が封印されているときは、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。