裁判所の手続・債務整理
簡易裁判所における民事訴訟の代理
簡裁代理権の認定を受けた司法書士は、簡易裁判所の訴額が140万円以下の民事事件については、司法書士が代理して訴状や答弁書を作成して訴訟活動をしたり、裁判外でも和解交渉を行うことができます。
裁判所提出書類の作成
裁判所の手続きは、弁護士や司法書士の代理人につけずに、本人が自ら行うこともできます。
このような場合は、必要に応じて書類作成等のサポートを受けたりしながら、本人が裁判所に出向き、裁判手続きを行うことになりますが、司法書士は、訴額や管轄にかかわらず、裁判所に提出する書類の作成を行うことができます。
- 民事裁判(訴状、答弁書、準備書面等)
- 相続放棄
- 遺言書検認
- 後見等開始の申立
- 自己破産
- 個人再生
などを作成します。
相続放棄の手続
相続放棄は、被相続人が亡くなったあとに、相続する権利がある人が、自分が相続人になったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てをしなければなりません。
その期間を過ぎると、相続放棄を行うことができなくなります。
◆手続きの主な流れ
- 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、戸籍等を添付して、「相続放棄申述書」を提出します。
印紙:800円 切手:合計514円(内訳84円×6枚、10円×1枚)(福岡家庭裁判所の場合)
↓ - 提出後1~2週間程すると、家庭裁判所から、審理のため、自らの意思にもとづく申述かどうか等をお尋ねする照会書が届きます。
照会書をよく読んで、回答書に記入し、署名押印して裁判所に持参又は送付します。
(この時押印する印鑑は、1.で提出した際に使用したものと同一のものが必要です。)
↓ - 家庭裁判所の審理の結果、相続放棄が認められた場合には、家庭裁判所から「相続放棄申述受理証明書」が送られてきます。
⇒ 相続放棄が受理されると、初めから相続人ではなかったものとみなされます。
◆相続放棄はどんな時に利用するのでしょうか?
- 借金など、明らかにマイナスの財産が多い場合。
相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も、一切相続しないことになります。 - 亡くなった方や、他の相続人と疎遠であったり、相続人として相続手続きに関わりたくない場合。
ただ単に財産がいらないという相続人でも、負債がない限りは、特に相続放棄の手続きの必要はありません。
遺言書検認の申立て
遺言書の検認とは、亡くなられた方が自分で手書きで作成した自筆の遺言書について、法務局において保管される遺言書保管制度を利用していない場合に家庭裁判所に申し立てを行います。
申立てにあたっては、亡くなられた方の出生から死亡までのすべての戸籍を調査して、相続人が誰かを確定させます。
申立てを受理した裁判所は、その相続人全員に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、検認期日においては、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止します。
なお、この手続は遺言の有効・無効を判断するものではありません。
遺言自筆証書が封印されているときは、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。
成年後見の申立て
認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が十分でない方は、
不動産や預貯金などの財産を管理したり、 身の回りの世話のために介護サービスや施設入所契約を結んだり、遺産分割の協議をする必要があっても、これらのことを自分で行うのが難しい場合があります。
また、自分で適切に判断できないまま、自分に不利益な契約をさせられたり、悪徳商法の被害にあうおそれもあります。
このような判断能力が不十分な方々を保護し、支援するために、成年後見の制度があります。
成年後見制度は、大きく分けると 法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。
法定後見制度
すでに判断能力が衰え始めているか、衰えてしまった方が対象です。
家庭裁判所に申立てをすることから始まり、 後見が終了するまで、すべて家庭裁判所が関与します。
支援してくれる人(後見人等)は家庭裁判所の審判で選任されます。
後見・・・ほとんど判断することができない
保佐・・・判断能力が著しく不十分である
補助・・・判断能力が不十分である
の3つに分かれており、 本人のためにどのような保護・支援が必要かなどの事情に応じて、
家庭裁判所の審判により支援してくれる人(後見人等)等が選任されます。
◆手続の流れ
- 管轄の家庭裁判所に後見・保佐・補助の開始の申立
↓ - 審問・調査・鑑定
(家庭裁判所で事情を尋ねたり、必要に応じて鑑定が行われます。
また、本人が家庭裁判所に行くことができない場合は、本人のところへ家庭裁判所の調査官が訪問することもあります。)
↓ - 後見・保佐・補助の開始の審判、成年後見人等の選任
↓ - 審判の確定(法定後見の開始)
- 管轄の家庭裁判所に後見・保佐・補助の開始の申立
※ 申立てから審判、確定までの手続きにかかる期間は、事案によってそれぞれ異なりますが、概ね2ヶ月~3ヶ月程度です。
※ 家庭裁判所に申立後は、裁判所の許可を得なければ、申立てを取り下げることはできません。
◆主な必要書類について(福岡家庭裁判所の場合)
- 申立書
- 収入印紙(申立用800円~2,400円、後見登記用2,600円)
- 郵便切手(3,480円~4,480円)
- 鑑定費用(鑑定を実施する場合のみ。上限10万円)
- 戸籍謄本
- 住民票
- (後見等の)登記がされていないことの証明書
- 成年後見用診断書(定型の書式があります)
- 財産の内容についての資料
(預金通帳、保険証券、不動産、収入や支出に関する資料等の写し) - 療育手帳や障害者手帳
任意後見制度
任意後見は、今は判断能力に問題がなく元気な人が対象です。
判断能力が衰えた場合に備えて、 任意後見契約により、将来の後見人を自分で決めることができます。
将来自分の後見人になって欲しいと思う人(受任者)と一緒にどんなこと頼みたいかをよく話し合い、契約内容を決定します。
その上で公証人役場で「任意後見契約公正証書」を作成します。
受任者は、親族、友人、知人であっても、 司法書士等の専門家でもかまいません。
債務整理
◆手続きの流れ
- 債務整理について依頼を受けると、債権者に対して、債務整理の依頼を受けた旨の書面を送り、これまでの取引を開示してもらうよう通知します。
- 通知書送付後、2週間~1ヶ月すると、債権者から債権届、取引履歴等が開示されます。
- キャッシングで、利息制限法を超える金利で取引していた場合には、利息制限法による引き直し計算を行い、負債総額を確定させます( この際に過払金が発生する場合もあります)。
- 全ての債権者からの開示にもとづき、負債の総額が確定したら、依頼者の収入や家計の状況を見て、主に任意整理、自己破産、個人再生の3つの中から債務整理の方針を決めます。
任意整理
任意整理とは、裁判所を介さずに債権者と直接交渉して、負債額を確定し、月々の返済額、返済期間、返済方法について合意する方法です。
収入や家計の状況を見て、無理のない返済計画を立てた上で、次のような内容の和解ができるよう、債権者と交渉していくことになります。
- 契約当初からの取引履歴にもとづいて、契約・取引利率によっては、利息制限法所定の利率(年15%から年20%)に引き直して計算する
- 分割払いの場合も、可能な限り遅延損害金や将来の利息を付けないこと
※ 分割払いの場合は、3年から5年で支払い終えることが目安になります。
※ 任意整理は話し合いですので、交渉がまとまらず和解できないこともあります。
自己破産申立
自己破産手続とは、自分の財産や収入だけでは支払いができない状況となった場合に、裁判所から選任された破産管財人が、債務者の財産をお金に換えて、債権者に対して公平に配当し、債務を清算する手続きです。
自己破産手続きには、管財型と同時廃止型があります。
個人の破産の場合、配当するような財産すらない場合もあり、 事案によっては破産手続開始決定と同時に、破産管財人の選任もなく、破産手続廃止決定がなされて破産手続を終了することもあります(同時廃止型)。
一方で管財型の場合は破産管財人が選任され、財産調査や債権調査、免責調査等がされ、債務者(破産者)の財産をお金に換えて配当した上で破産手続終結の決定、もしくは配当する財産がない場合は破産手続廃止の決定をします。
同時廃止型よりも手続きの期間が長期にわたり、また裁判所に納める予納金の額も大きく異なります。
破産宣告を受けた者は、免責の許可を受けることにより、法律上の債務の支払義務から免れますが、免責不許可事由(浪費・ギャンブルなど)に該当する場合は、免責が許可されないことがあります。
個人再生
個人再生とは、多額の借金のため返済し続けることが困難な「個人」が、将来の継続的な収入によって、債務を分割して返済する計画を立て、債権者の意見等を聞いたうえで、その計画を裁判所が認可した場合に、その計画に従って返済することにより、残りの債務が免除される制度です。
ローンを支払っている住宅がある場合は、住宅ローンの返済も含めた再生計画も可能です。
- 利用できる人
債務額が5,000万円以下の個人債務者で、かつ、継続的に又は反復して収入を得る見込みのある者に限られています。
自己破産手続の免責不許可事由に該当している場合にも利用することができます。 - 弁済期間
弁済期間は原則3年ですが、特別の事情があるときは、5年を超えない範囲で延長することができます。
この期間内に、3ヶ月に1回以上の割合で分割で弁済します。 - 弁済額
抵当権等のない債務の場合は、債務の総額が3000万円以下の万円以下の場合はその5分の1以上、又は100万円のいずれか多い額になります。
なお、債務の総額が100万円未満のときはその全額、総額の5分の1が300万円を超えるときは300万円となります。
ただし、債務者が財産を有している時は、その財産の価格を超える弁済が必要になります。
- 利用できる人
信用情報登録(ブラックリスト)について
ローン等を利用した際の契約内容や返済状況、延滞や債務整理等の情報が登録されています。
自己の信用情報は、原則本人からの開示請求が必要です。
情報の登録期間は、情報の種類によって異なるほか、各機関や加盟する会社によっても異なるようです。