しばた司法書士・行政書士事務所|柴田久美子

相続・遺言書の作成

相続登記

亡くなった方(被相続人)のすべての財産(一切の権利や義務)を、一定の親族(相続人)が引き継ぐことを相続といいます。
相続手続きは、遺言書があればその内容に従い、遺言書がない場合は相続人の間で遺産分割協議を行います。
遺産分割協議を行い、相続人全員が遺産相続の内容について合意した場合は、遺産分割協議書を作成します。

遺言や遺産分割により取得した財産が土地や建物の場合は、相続による登記手続が必要になります。
亡名義人のまま不動産を売却したいという場合でも、必ず相続登記手続きが必要になります。

遺産分割による相続登記

遺産分割協議による相続登記に必要な主な書類は以下のとおりです。

  • 被相続人の、生まれてからから亡くなるまでのすべての戸籍謄本、除籍謄本
  • 被相続人の戸籍の附票(または本籍地記載の住民票)
  • 相続人全員の戸籍謄本(または抄本)、印鑑証明書
  • 相続される方(新しく名義人となる方)の住民票
  • 相続手続をされる不動産の固定資産評価証明書(または納税通知書)
  • 遺産分割協議書(司法書士が作成いたします。)
  • 委任状(司法書士が作成いたします。)

相続登記をせずにそのまま放置しておくと・・・

    • 不動産の名義が何十年も前にに亡くなられた方、たとえば祖父や曾祖父のままだったりすることがあります。
      このような場合は、時が経つにつれて新たな相続が発生し、相続関係が複雑になり、結果、話し合いがまとまりにくくなることが多くなります。
    • 相続登記を何年も放っていて、いざ手続きをするとなった時に、戸籍を調査するまでは誰が相続人かわからない、どこに居るのかわからない、ということもあり、戸籍・住民票等の収集に時間や費用がかかってしまいます。
      また、戸籍や住民票が保存期間の関係で取得できない場合は、不在住・不在籍証明等、必要書類が増えてしまいます。
    • 面識のない親族と遺産分割協議をしなければならない可能性が高くなります。
      未成年者や認知症の高齢者、行方不明の方等がいる場合は、協議が進められなくなります。
      別途、後見の手続きや特別代理人の選任等が必要となる可能性もあります。

◆ 令和6年4月1日より相続登記は義務化されます。
できる限り早めに相続登記することをお勧めいたします。

遺言書の作成

1.遺言書の種類

遺言書の種類としては、おおまかに、公証役場で公証人が書く「公正証書遺言」と、自分で自筆で書く「自筆証書遺言」の2種類があります。  

  • 公正証書遺言

    公証役場の公証人が作成する遺言書です。
    2人以上の証人立ち会いのもと、遺言する本人が口述した遺言内容を公証人が筆記し、各自が署名押印する方法により作成されます。

    原本は公証役場に保管されるため、遺言書の存在・内容が明確で、滅失や偽造・変造のおそれもなく、遺言者が亡くなった後の家庭裁判所での検認手続等は必要ありません。 

    ただし、公正証書遺言は作成の際には、 財産の価格に応じて公証人手数料の費用がかかります。
    遺言者本人が病気などで外出することが難しいときは、公証人が本人のご自宅や病院などへ出張して作成することもできます。

  • 自筆証書遺言

    遺言書の全文、日付、氏名をすべて自書(ただし、「財産目録」については例外があります。)し、これに押印することによって成立する遺言書です。

    遺言者が自分で作成することができ、特別な費用もかかりません。

    しかし、保管の方法によっては、遺言書を紛失する可能性や周囲の人による隠匿などのおそれがあります。
    また、法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言は、遺言者が亡くなったあとに遺言書の内容を実現するためには、遺言書を家庭裁判所提出して、検認の手続きを経る必要があります。

    相続手続をする場合、自筆証書遺言は、公正証書遺言と比べ、多くの戸籍を集める必要があります。
    法務局に保管されていない場合には、家庭裁判所の検認手続きが必要となります。
    また、法務局に保管されている場合には、遺言書情報証明書を申請する必要があり、手間と費用がかかることになります。

2.遺言書の内容

遺言書の内容としては、法律的な効果が生じる遺言事項と、法律的な拘束力がない付言事項とに区別されます。   
これは、公正証書遺言であるか自筆証書遺言であるかを問いません。  

  • 遺言事項(いごんじこう)・・・
    遺言事項というのは、遺言書に書くことで、法的効果が生じます。民法やその他の法律に定めがあります。
    例えば、相続分の指定や遺産分割方法の指定などの財産に関するもの、遺言執行者の指定や遺言認知などの身分に関するものなどがあります。  
  • 付言事項(ふげんじこう)・・・
    付言事項には、法律に定めはなく、法的な拘束力はありません。    
    例えば、子供や家族、財産を受け取ってほしい人への思いなどを自由に書くことができます。

3.自筆の遺言書について

自筆の遺言書をつくるときに、法律の要件となる大切なポイントが4つあります。

  1. 自筆で書く
    遺言書は、タイプライターやワープロなどは使うことはできません。代筆もできません。
    全文すべて、自分で、手書き(自書)しなければなりません。
    しかし、財産目録については、例外で、全部または一部の目録を次のように作成することができます。
    ① 財産目録をパソコン等で作成する
    ② 遺言者以外の人が財産目録のみ作成する
    ③ 不動産について登記事項証明書を財産目録として添付する
    ④ 預貯金について通帳の写しを財産目録として添付する
    ※ 注意 自書によらない財産目録を添付する場合には、その「毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)」に遺言者自らが署名押印をしなければいけません。
  2. 日付を正確に書く 
    和暦、西暦、どちらでも構いませんが、 遺言書を作成した日付を「●年●月●日」ときちんと特定して書きます。
    「吉日」という書き方はできません。
  3. 署名する
    戸籍上の名前を姓・名を正確に書きましょう。
  4. 押印する 
    認印でもかまいませんが、実印の方が、遺言者が使っていた印鑑であると確認しやすいこともありますので、実印をおすすめします。
◆遺言書の作成時の注意点
    • 二人以上の人が同じ書面に一緒に書くことはできません。
    • 遺言書は何度でも書きなおすことができます。   
    • 遺言書に書いた財産でも、その後使ってしまっても大丈夫です。 
      たとえば、遺言書に財産として預金の口座を書いた場合は、もう預けたお金を動かしてはいけないのではないか、お金を使えなくなるのではないかと心配される方がいらっしゃいますが、もちろん使ってしまって大丈夫です。

      同様に、遺言書に財産として不動産を書いた場合も、自ら処分してしまうことについて、何の問題ありません。  
      遺言書に書いた財産を処分したり、預金を使ったりしたときは、その行為によって、前の遺言を取り消したものとみなされます。  

4.自筆証書遺言保管制度について

遺言書保管の申請手続きの流れ

  1. まずは、自筆証書遺言に係る遺言書を作成します。
  2. 遺言書保管の申請をする遺言書保管所(法務局)を決めます。
    保管の申請ができるのは、
    ① 遺言者の住所地 
    ② 遺言者の本籍地 
    ③ 遺言者が所有する不動産の所在地

    のいずれかを管轄する遺言書保管所(法務局)になります。
  3. 申請書を作成します。
  4. 法務局に保管の申請の予約をします。
    ※ 必ず予約が必要です。当日予約はできません。
  5. 保管の申請をします。
  6. 保管証を受け取ります。

遺言書保管の申請に必要なもの

  • 自筆証書遺言に係る遺言書(封筒は不要です。)
  • 申請書(法務局にも備え付けられています。)
  • 添付書類
    本籍の記載のある住民票の写し等(作成後3か月以内)
  • 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証等の顔写真付きの身分証明書)
  • 手数料(収入印紙、1通につき3,900円)

◆注意事項

  • 法務局において保管されている自筆証書遺言書については、家庭裁判所での検認が不要となります。
    (ただし、相続手続きに必要となる遺言書情報証明書の取得にあたっては、検認手続と同様に、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍すべてが必要となります。)
  • 手続きには、本人が出頭する義務が課されていますので、ず遺言者本人が法務局に行く必要があります。
  • 法務局では、自筆証書遺言の方式について、外形的な確認を行います。
    遺言書の内容についての相談をすることはできません。
  • 作成された遺言書が所定の様式に合うものであれば、保管制度が開始する前に作成した遺言書でも保管申請することができます。
  • 法務局に遺言書を預けたあとでも、遺言書の内容を閲覧することや、保管の申請を撤回することは可能です。
    ただし、閲覧を請求できるのは、遺言者ご本人のみとなります。
  • 保管を申請して以降に、住所・氏名等に変更が生じた場合は、その旨を届け出る必要があります。